「明儿见:mingerjian(みなぁ〜じぇん)」
また明日な!、またな!の意味。
一般的には「明天见:mingtianjian(みんてぇんじぇん)」を使いますが、
北京っ子は「明儿见」。儿erの文字が北京訛りを表してます。
北京語は標準語いわゆるマンダリンとは違います。
標準語は官吏が使っていた言葉、日本だと公家や武士言葉がベースで、
北京の「街っ子」の言葉とは違うんですよね。
ちょっとダミ声で、鼻に音をくぐらせながら、巻き舌っぽく話すのが北京男児。
まぁそれが心意気というか、カッコいいと思ってるので、
私の専属運転手をしてくれていた刘哥(劉兄貴)は私に北京語を教えてくれるのでした。
なので、毎日彼との別れの挨拶は、
「明儿见」また明日な!→「好的:haode(はぉだ)」おう、またな!。
昨日の夕陽がすっごく綺麗で、つい、刘哥の事を思い出しました。
赴任最終年の初冬に60歳の定年でドライバー業を卒業されましたが、
見た目は怖いけど(笑)、優しい人でした。
まぁ通説の通り、北京人の彼は上海人を嫌ってましたけどね。
「あいつらは男のくせにチュンチュン鳥のように喋りまくるぜ…」的な毒舌で。
彼は18歳の時に免許を取り、タクシードライバーとして過ごし、
50歳からうちの会社の専属運転手になったのですが、
「クルマはトヨタのクラウンが一番だ。壊れないし乗り心地もいい。
最近はクルマを知らん奴がBMWやAUDI、BENZなんか乗ってる。アホだ。」
彼の定年の際に、北京でも有名な「しゃぶしゃぶ屋」で、彼の同僚と私の部下も招いて
送別会を開いたんですが、めちゃめちゃ喜んでくれました。
(しゃぶしゃぶは「涮肉:shuanrou(しゅぁんろう)」)
誘った時は、「そんなのいらねぇ。気を使うんじゃねぇ」なんて言ってましたが、
彼の仕事柄、私が仕事上の飲み会の場合、私が飲み終わって無事家に着くまでが
「俺の仕事だ!」と言い張るような人でした。(なだめすかして帰ってもらうのですが)
なので「あんたとはこれ迄の3年間で、一緒に酒を飲んだことがない。
別れの際だから最後に一緒に兄貴の好きな酒を飲もう」と言ったら承諾してくれました。
酒を酌み交わす。これは万国共通かもしれません。
ただし、ここは北京。酒は白酒(ばいじゅう)という強烈な酒です。
刘哥の好きな酒は北京を代表する紅星の「二锅头:erguotou(あぁぐぉとぅ)」。
高い酒ではないです。北京のオヤジが毎日飲む酒。
100mlの瓶を片手に、美味いしゃぶしゃぶをツマミながら、肩を組みつつ語らい合う…
日本だと木曽路なんかで「ワンカップ」をそれぞれ持ちつつ談笑し合うような感じ…
いやね、アルコール度数56度なんで…盛り上がりますわね。
人生で数年間だけの付き合い。もっと深く付き合えたのかもしれないけど、
過ぎた時間を戻すわけにはいかない。
人って、別れるために出逢うようなものですね…寂しいけど。
後悔しないように生きるだけ。
中国のコロナ状況、北京でも感染者拡大や死亡者増大のニュースを見て、
すごく心配ですが、俺に何かができるわけでもない。
夕陽を見ながら、少し物想いに耽った昨日でした。
明儿见!!!